夕方になると、玄関のドアが開く音がします。
「ただいま」という声。学校から帰ってくる子、遊びから戻ってくる子、仕事を終えた夫。
家で仕事をしている私は、その音が聞こえるたびに、「おかえり」と返します。
足音や声だけで、いま帰ってきたのが誰なのか、たいてい分かるようになりました。
一日に何度も行き交う、「ただいま」と「おかえり」。それが、いま私たち7人家族が暮らしている家の、いちばん日常的な風景です。

でも、この当たり前にたどり着くまでには、少し長い道のりがありました。
あの育休の1年から、ここまで
少し前に、夫が「育休日記」を最後まで書き上げました。
1年間の育休をとって、家族みんなで過ごした時間の記録です。夫自身の言葉で、当時のことが綴られています。
3年ものあいだ途中で止まったままの日記でした。
書き終えられなかったのは、そのあとの暮らしが、あまりにも目まぐるしかったから。
その3年のあいだにも、我が家は少しずつ変わっていきました。
いちばん大きな変化は、家族がひとり増えたこと。
育休日記の頃は6人だった私たちは、いつのまにか7人家族になっていました。

あの育休の1年の終わりには、夫が大きな決断をしています。
長く勤めた市役所を辞めて、新しい仕事に飛び込むこと。
「安定した場所を手放すのは、こわくなかったと言えば嘘になる。それでも、家族との時間を真ん中に置いて生きていきたい——」
そう話す夫の顔を見て、私も一緒に前を向くことにしました。
7.5坪に、7人で
夫が転職して1年ほどが経った頃。
ようやく新しい生活も落ち着いてきた私たちには、どうしても向き合わなければならない問題がありました。家の狭さです。
当時住んでいたのは、建坪7.5坪の家。そこに7人。
正直に言うと、4人で暮らすまではちょうど良い大きさだったあの家も、7人で暮らすには、あまりにも手ぜまでした。
ひとりぶんの居場所を探すのもひと苦労で、物理的なゆとりが暮らしのあちこちで足りていませんでした。
もっとゆとりのある場所で暮らしたい。
その一心で、子どもたちをずっと育ててきた安心感のある街を離れ、海沿いの小さな町へ移り住むことを決めました。

そして出会ったのが、築43年の古い一軒家。
リノベーションが得意な建築士の知人に頼んで、素敵な案を考えてもらい、限られた予算の範囲内でとても素敵に直してもらいました。
正直なところ、工事のあいだは何度も、「本当にこの古い家が、7人で暮らせる家になるの?」と不安になったものです。
ぐちゃぐちゃも、ぜんぶ暮らし
工事が終わって、この家に越してきたのが2025年の春。気づけば、もう1年とすこしが過ぎました。
住んでみてはじめて分かったことがたくさんあります。
洗面所のちょっとした渋滞。乾かしても乾かしても追いつかない、7人分の洗濯。広くなった分、ものが置きっぱなしにされる玄関。おもちゃ置き場は決めたはずなのに、今日もリビングには散らかり放題のレゴたち。

正直に言うと、私たちの毎日は、ぜんぜん整っていません。
SNSで見かけるような、いつもピカピカのお家とは、かなり違います。
それでも、その散らかった感じもまるごと含めて、ここが私たちの暮らし。
子どもの声で朝が始まって、洗濯物の山と格闘して、みんなで食卓を囲んで、一日が終わっていく。
華やかではないけれど、ちゃんと続いている暮らしです。
この場所で、これから記録していきたいこと
サイトの名前も新しく「ミツノキマガジン」として、夫からバトンをひきついで、また少しずつ書いていくことにしました。
書き残したいことは、いくつもあります。
築43年の家を直していく中で見つけた「これは正解だった」と「これはやめておけばよかった」。
3男2女、5人それぞれのまったく違う個性のこと。
大家族の暮らしをなんとか回していくための、ささやかな工夫のあれこれ。
うまく書くことより、本当のことを。憧れたくなる暮らしより、続いていく暮らしを。
そんなふうに、飾らずに記録していけたらと思っています。
同じように子育ての真っ最中の方、いつか田舎で暮らしてみたいと思っている方、古い家を直すことに興味がある方。
どこか少しでも重なるところがあれば、ときどきのぞきに来てもらえたら、とても嬉しいです。

長い遠回りをして、やっと「ただいま」と言える場所ができました。
ここから、また少しずつ。どうぞよろしくお願いします。



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